座布団の仕様のはなし

1.座布団の前・後ろ

教育の行き届いた旅館、丁寧なサービスを心がけている旅館を一目で見分ける方法があるのをご存じですか。実は座布団の置き方一つで善し悪し分かってしまうのです。
座布団には前と後ろ、裏と表があり、高級な旅館ではこの座布団の向きを揃えて置くようにと教育を受けます。
表か裏かなど、お客様の方も見ていないと思いますが、見られていないところにまで目を配ることで、旅館全体の雰囲気を作り上げるのかも知れませんね。

さて、ここで質問です。座布団の前はどちらでしょうか?
→ここには 座布団を上から見た写真 が入ります

上から見ると少し分かりづらいので、横から見てみましょう。
→ここには 座布団を4方向から見た写真①②③④ が入ります

四枚の写真のうち三つには縫い目があり、一つだけ縫い目がないことにお気づきになられたでしょうか。
この縫い目(わさ)が無い部分が座布団の前側になります。
座布団を作る際、下の図のように長方形の布を二つ折りにして、周囲の三か所をミシンで縫うために、このような形になるのです。

→HPに掲載してある図(http://www.watayamori.co.jp/hpgen/HPB/categories/38529.html)

座布団を置く時は、縫い目の無い部分を前(お客様の膝がくる方向)に並べ、入口に近い方向(下座)または後方から座っていただきます。

2.座布団の裏・表

では、裏と表はどうやって見分けるのでしょうか。
下の写真や図のように、縫い目が上から覆いかぶさっている方が表側になります。

→ここには 座布団を横から見た写真と図 が入ります
図は御社のHPの(http://www.watayamori.co.jp/hpgen/HPB/categories/38529.html)
(写真は拡大してあるものの方が分かりやすいかも知れません)

他にも、座布団によっては中央で綴じているしめ糸の「ふさ」で見分けが付くものもあります。
その場合、ふさが付いている方が表で、付いていない方が裏になります。
また、しめ糸には関東型と関西型があり、しめ糸が「×(かける)」または「+(プラス)」の形をしていたら関東、「人(ひと)」または「Y(ワイ)」の形をしていたら関西の座布団です。
また関西では、「人」あるいは「Y」の閉じている方向が座布団の前面になります。

3.表が裏で、裏が表?

座布団の表裏の解釈には諸説あり、中には「身体に触れる方が裏で、身体に触れない方が表」というものもあります。
これは着物で肌が触れる方を裏、人に見せる方を表とする考えと同じものです。ただし、これらは呼び方が異なるだけで、見えている方(人が座る方)を表として使用するのが一般的です。

座布団の裏表に気を付けなくてはならないのは、あくまでも人をもてなす時、あるいは座布団を準備しなければならない時で、表裏を間違えて置くとお客様に対して失礼になります。
逆にもてなされる側の時は、たとえ前後・裏表が違っていたといても、動かしたり裏返したりせずに、そのまま使うのが礼儀です。

☆知ってなるほど!座布団にまつわる豆知識☆
関東では「ダウト」関西では「座布団」?




「ダウト」というトランプ遊びをご存じでしょうか。
『疑う』という意味のゲームで、1(Aエース)から順番に2、3、4と言いながら、裏向けに持ち札を順番に出していき、言った数と違うカードを出した人を見破って、「ダウト!」と声を掛けるのがルールです。
この時、関東では嘘をついた人に「ダウト!」と声を掛けますが、関西ではなんと「座布団!」と言うそうです。
なぜ「座布団」と言うかについては諸説があり、「ダウト」が「ダブト」となって、さらには「ザブトン」と変化したとも言われています。